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間取りをつくろう

千差万別・百人百様

 ©fa-produce
   


自戒を込めて


玄関を入ると右手に便所と馬屋があり、左側には座敷がありその奥に茶の間がある。
そしていちばん奥まった場所が台所だ。
古の日本家屋の間取りは、すべからずこんな風だった。
今も地方に行けば旧家と呼ばれる民家には、そういう間取りが普通に見られる。

ならば21世紀を迎えた住宅の間取りは、どれだけ進化しただろう。
結論から言えば、馬屋があったころの間取りとさほど変わりはない。
玄関を入れば便所があり洗面所、浴室と続き、奥まった場所はかつてと同じく台所だ。
変わったのは間取り図の中から馬屋が消えたことぐらいか。

高度成長期をとうに過ぎ、人の暮らし方も価値観もかつてとは比較にならないほど多様化したのに
間取りだけが一向に変わらないというのは、私たち住宅業界の怠慢でしかない。
加えて住まい手の方にも責任の一端はあるだろう。

人との差別化、自分の個性を何より重んじるのなら、
旧態依然の見本のような間取りを、安易に受け入れてはいけない。

 間取りができるまで


いったいどれだけの人が、白紙の段階から間取りをつくっているのだろう?

多くの場合、それはつくり手である住宅メーカーやゼネコンから一方的に提示されているはずだ。
紙の中にはすでに敷地に適した家の形があり、間取りも出来上がっているのだろう。
つくり手は「これをタタキ台とし、間取りを考えてゆきましょう・・」と言うに決まっている。
でもそのタタキ台に変更の自由度はそれほど残されていないことに、あなたはすぐに気付くはず。
でもまぁ、プロがイイと言うのならこれでイイか・・となる。

つくり手が(建築士とは限らない!)よく使う作図ソフトは、敷地面積と法的根拠を入力し
部屋の元となる矩形をマウスでチョイチョイとやれば、簡単に間取り図である平面図ができあがり、
その他にもプレゼンに必要な平立断面図くらいなら、同時にできてしまう。

あんまり早くできてしまうので、意図的に日にちを置いて訪問するのは営業マンの手である。
だから大昔も今も間取り図に大きな変化などあるはずがない。
個性化だ差別化だと騒いだところで、田んぼや畑を耕していた頃と家の間取りが
そう大きく変わっていないとしたら、人の暮らし方だって大きく変わるはずがない。

仕事が終わり、うちに帰って風呂に入って食事をして、ちょっとテレビを観て寝てしまう。
どうだろう。田んぼを耕していた頃と現在の暮らし方と、そこに劇的な変化はあるだろうか?

 つくり手の責任


どうしてここまで間取りに変化が起きなかったのだろう。
理由はとても簡単。面倒だからしないだけで、他に明確な理由はないはずだ。
構造物をつくるのは、相応の知識があればそう難しいことではないだろう。
でも住まい手の暮らし方や価値観にフィットした家をつくるとなると、知識だけではどうしようもない。
住まい手からの緻密なヒアリングは当然必要になるだろうし、
マウスで間取りをつくっていた頃より、手間も時間も比較にならないほど必要になるだろう。
まさに千差万別、百人百様の間取りができるはずで、間違っても間取りの雛形など使えるはずもない。

はたしてどれだけのつくり手が、こんな手間のかかる作業をしているのかは知る由もないが、
住まい手のことより着工数ばかり気にしていては、実行はまず不可能だろう。

自分たちにフィットした家を持ちたい。
そう考える人が注文住宅や建築家の家を選び、そこではきっと間取りも丁寧につくられているはずだ。
でもこれは考えようによっては少々変な話ではある。
スタンダード化を嫌い、自分たちに最適な間取り、家づくりを希望するとなると
それは特別な選択肢ということになってしまい、またぞろプレミアムなどと呼ばれてしまうのだろう。

まったく、可笑しな世の中になったモンだ。

Slow & Fast


間取りを含むプランニングはゆっくりと時間をかけて、
施工は速やかにというのが家づくりの鉄則だ。

仮住まい費用などを筆頭に、コストに直接影響する施工は現場を空けることなく迅速に進める必要がある。
逆にプランニングは可能な限りゆっくりと、慎重に進めるのがイイに決まってる。

でも現実には Fast & Fast が大勢を占めているようだ。

昨今はリフォームブームという残念な現象が続いている。
新築から10年を待たずしてリフォームをするケースも珍しくないようだ。
本来なら家を建てた後の10年などアッと言う間に過ぎるはずで、
その間にあっちが気にくわない、こっちが使い難いなどと思う方が異常だ。
そうなる理由は、プランニングのどこかに問題を残したままGOサインを出しのかも知れない。

急いでプランをし、急いで着工する責任はつくり手側にもあるけれど、
ヒアリングが始まる前から「完成はいつごろですか?」と問う住まい手にも問題がある。

分譲住宅やマンション、賃貸住宅はあなたの都合とは無関係につくられている。
その方が楽チンで結構だと思う人が居る一方で、それではツマランという人も居る。
もしあなたが後者の方なら、間取りを愉しく慎重に構築してみてはどうだろう。
だからといって、あなたが自らの手で間取りをつくる必要はない。
それどころか、間取りの構築は建物の安全にも直結するので、安易な作成はやめた方が無難だ。

そうではなく、つくり手と力を合わせて一緒に間取りをつくりなさいという意味だ。
時として意見が食い違い、口論になる時もあろうだろうが、それでもイイじゃないか。
そうやって完成した家は、さぞかしあなたの思い入れが詰め込まれた家になっているだろう。
間違っても10年やそこらでリフォームの必要性など感じないだろうし、
それでこそ、超長期の住宅ローンだって頑張って返して行けるというものだ。

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