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家具再考

調度品としての家具

 ©fa-produce    
整然と

親しくしていた家具屋さんが商売替えしてしまった。
廃業の理由が売り上げにあることは確かだろう。聞かなかったけど・・。
家具屋さんの商売替えの一因がクロゼットがあることはまちがいない。
いっときこの私も室内から家具を一掃し、クロゼットを盲信していたころがあったわけで、
今となれば、なんともお恥ずかしい。

クロゼットに押され、家具が選ばれない傾向は今も続いているようで
書店に並ぶ建築雑誌を見ればそうとわかる。

世間で言うほど現代人が忙しいとは私には思えないけれど、
ドア一枚でなにもかも無かったことにしてくれ、おまけに大量のモノを乱暴に呑みこむクロゼットは
忙しさを気取っている現代人には都合のいいアイテムだ。

引き渡しも無事に終わり、家財道具も搬入してもなお室内は整然としている。
ガラ~ンと殺風景な室内で、果たしてあなたは何を想うのだろう?
そんな空間で、あなたはこれからの暮らしを夢見ることができるのだろうか?

調度品としての家具

地方に行くと今でもお嫁さんの持ち込む家財道具、特に家具は相当なボリュームで、
荷台部分がガラス張りになって、運ばれている家具がよ~く見えるトラックまである。
持参した家具はどれも上等で、文字通り一生物となってゆく。

家具は収納庫という他に、調度品という側面も持ち合わせているわけで、
こればかりはクロゼットが逆立ちしても敵わない家具の美点だ。

ガラ~ンと片付いているのもいいけれど、ハイライトのように一脚だけ置かれたチェア、
空間の切り替えを狙って置かれたサイドボードやチェストはまさしく調度品と呼べる代物で、
加えてそれが上等で長く大切に使われている家具だとしたら、
そこからはオーナーの為人まで伝わってくる。

クロゼットの普及とともに家の中から姿を消した調度品たち。
ここはひとつ大奮発して、一生物の家具を揃えてみてはどうだろう。
事情が許されるのなら、買ったことを後悔するほど上等な家具がイイと思う。
そういう上等な物を長く使うことで、暮らしは少しづつ豊かに変わってゆくのだから。

帳尻合わせ

クロゼットは効率の良い収納アイテムだと勘違いしている人は多い。

例えば部屋の一部分にクロゼットを造ったとすると、隣の部屋にはその分の出っ張りが出現する。
出っ張りを正当化しようとトイレや新たな収納を造ったりして帳尻を合わせるけれど、
中には必要もないのに無理やり造られる収納も少なくはない。
だからクロゼットが効率的だなんてウソだ。

そこへゆくと家具は潔い。

部屋の中にポンと置けば居住面積はその分減るけれど、隣室にまで影響が及ぶことはなく、
家具をどければすぐに元の四角い部屋に戻ってくれる。
クロゼットも本来こうして作ればいいのだけれど、誰もそんなことは事情があってやらない。
クロゼットも家具もそれぞれに美点があるから、それを理解してプランに採りいれるべきだ。

LDKは家具がもっとも映える場所のひとつだろうし、主寝室だってそう。
玄関やホールにだって、品の良い家具が映える場所はあるけれど、
巣立ってしまえば倉庫と化してしまう子供部屋は注意が必要だと思う。
そう考えているとイメージはどんどん膨らんでゆき、
お気に入りの家具が似合う家を創りたいと考えるようになるかもしれない。

家具に凝り始めると照明やオーディオ、はては食生活や呑む酒にまで影響が及んでくる。
実際にそうなった住まい手も私は存じているけれど、だからこそ家づくりは愉しいと言える。
それは家をつくっているようで、実は暮らしそのものを創っているのだし、
こんなに愉しいことも他にはちょっとないはず。存分に愉しんで頂きたい。

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